コラム
定量調査とは?定性調査との違いから実施方法、費用、具体的な調査手法まで解説
2023.07.26
[コラム]

「定量調査」は、数量や割合などの数値データを集計・分析するための調査手法です。実態を客観的に把握できるため、商品・サービスやマーケティング施策の改善に役立ちます。そのため、定量調査はマーケティングリサーチの代表的な手法として活用されており、現在ではオンライン上での実施も容易です。
しかし、定量調査は、顧客行動の背景や心理は明らかにできないので、掘り下げた調査には「定性調査」が必要です。そこで今回は、定量調査の基本知識や定性調査との違いについて、具体例を交えながら解説します。
目次
定量調査とは?用語を解説

「定量調査」とは、数値で表現できるデータを集計・分析する調査手法のことです。調査結果を分かりやすく数値化できるため、全体に占める量・割合などの全体像を把握したいときや、時系列ごとの推移を比較したいときに適しています。例えば、自社商品やブランドの認知度・満足度の調査は、典型的な定量調査です。
定量調査は数値で表現できるという性質上、信頼性の高いデータを得るために一定以上のサンプルサイズ(有効回答数)が必要です。サンプルサイズが小さいと、データの偏りが大きくなり、正確な傾向が把握しづらくなります。そのため、定量調査を行うときは十分な数の対象者へのアプローチが欠かせません。
定量調査を行う2つの目的
定量調査を行う主な目的として「実態調査」と「仮説検証」の2つがあります。
実態調査は対象となる商品・サービスの購入率や満足度などを調べるものです。一方、仮説検証は、例えば「売上が伸びない原因はここだろう」といった仮説を立てて、結果と照らし合わせるものです。
定量調査と定性調査の違いは?特徴を比較

マーケティングリサーチ(市場調査)の手法は、定量調査と定性調査の2種類に分けられます。前述した定量調査と異なり、定性調査は数値化できないデータを収集・分析する手法です。両者には以下のような違いがあります。
比較項目 | 定量調査 | 定性調査 |
---|---|---|
扱うデータ | ・数値化できるデータ ・認知率やシェア率など市場動向など | ・数値化できないデータ ・顧客行動の背景にある心理など |
調査対象数 | 多い | 少ない |
主な活用法 | ・全体像の把握 ・仮説の検証 | ・仮説の立案 ・顧客の心情把握 |
代表的な手法 | ・インターネットリサーチ ・会場調査(CLT) ・ホームユーステスト(HUT) ・郵送調査 | ・デプスインタビュー ・グループインタビュー ・オンラインインタビュー |
以上の点を踏まえて、定量調査と定性調査それぞれの特徴について掘り下げていきましょう。
定量調査:主な特徴
数値データを収集する定量調査は、主に選択式のアンケート調査で実施します。各選択肢をどれくらいの人数が選び、全体に占める割合はどれくらいなのかを、客観的な数値で把握できます。定量調査で得られた結果は、自社商材の購入状況や認知度、顧客のライフスタイルなどの分析に活用します。前述したように、あらかじめ立てた仮説が正しいか検証する仮説検証も可能です。
定量調査:代表的な手法
定量調査の代表的な手法として、以下の4つが挙げられます。
- インターネットリサーチ
- 会場調査(CLT)
- ホームユーステスト
- 郵送調査
いずれの調査手法でも、全体の傾向を正しく把握するためには、ある程度のサンプルサイズが必要です。なぜなら、サンプルが少なければ何が「多数派」であるか、はっきりしないからです。
定量調査:サンプル数や留意点
定量調査で必要なサンプル数は、母集団つまり対象者の総数と、許容できる誤差によって異なります。例えば、商品・サービスの利用者が10,000人の場合、許容誤差5%なら400件前後、1%の誤差に抑えたい場合は4,000件前後のサンプルが必要だと考えられます。
また、参加者が自由に回答できる「自由記述式」は、集計の手間がかかる上に定量データとして利用しづらいので、定量調査で採用する際は注意が必要です。
定性調査:主な特徴
定性調査は顧客の行動や心情など、数値で表しきれないデータを収集・分析するための手法です。そのため、前述した定量調査で得られた結果の背景にある、顧客の態度変容の心理的要因を分析するために適しています。
例えば、「なぜこの商品を利用するのか」「商品にどのような魅力を感じるか」「商品のどの点に満足しているか・不満足か」などです。つまり、定性調査の主な目的は「顧客を理解する」ことにあります。
定性調査:代表的な手法
顧客の態度変容や心理的な調査は選択式アンケートでは対応しづらいため、対象者から直接意見を得る以下のような手法で実施します。
- デプスインタビュー
- グループインタビュー
- オンラインインタビュー
いずれもインタビュー形式で、1人を対象とするデプスインタビューと、複数人で行うグループインタビューがあります。これらをインターネット上で行うのがオンラインインタビューで、近年では多くの企業が活用しています。
定性調査:サンプル数や留意点
調査対象数が少なくても信頼できるデータが得やすい点も、定性調査の大きな特徴です。インタビューの対象者は、多くても100人未満であることがほとんどで、10人前後のことも珍しくありません。サンプル数が少なくても、その結果から「心理的な共通項」を探ることで、商品開発やマーケティング戦略に役立つ情報が得られます。
定量調査の費用目安

定量調査にかかる費用は「質問数」と「対象人数」によって異なります。一般的な目安で参考程度となりますが、例えば、以下のような相場です。
質問数 | 対象人数 | 概算コスト |
---|---|---|
10問 | 100人 | 10万円前後 |
300人 | 15万円前後 | |
30問 | 100人 | 20万円前後 |
300人 | 30万円前後 |
質問数と対象人数のいずれかが多ければ、それだけコストも増加します。コストを抑えたいのであれば、どちらかを優先する必要があるでしょう。例えば、対象人数を増やして精度を高めたいなら質問数を増やし、たくさん質問したいなら対象人数を減らすのが効果的です。
定量調査のメリット

定量調査の主なメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 回答の協力をしてもらいやすい
- 調査結果のセグメント化で説得力のあるデータが得られる
- ネットリサーチの場合は低コストで実施できる
- 回答結果をグラフで可視化できる
回答の協力をしてもらいやすい
定量調査は回答者の協力を得やすいことが魅力です。定量調査では主に選択式アンケートを使用するため、回答者の負担が少なくなります。設問が10~15個程度と少なければ、数分間で回答を終えることができるでしょう。
また、近年では回答によって現金やポイントといった報酬が得られるアンケート調査も増えています。わずかな謝礼や報酬であっても、「スキマ時間」を利用して多くの参加者が回答してくれることが期待できるでしょう。
調査結果のセグメント化で説得力のあるデータが得られる
定量調査は、数量や割合などの数値で調査・分析できるため、誰が見ても客観的で説得力のあるデータが得られます。これらのデータは仮説・検証の裏付けとなり、将来の予測や施策・戦略の立案に効果的です。
調査結果を年齢・性別・居住地などの属性でセグメント化したり、ほかの設問と組み合わせて判断するクロス集計を行ったりすれば、特定の要因について詳細に分析することができ、説得力がさらに高まります。
ネットリサーチの場合は低コストで実施できる
定量調査をインターネット上で行う場合は、低コストで実施しやすいというメリットがあります。紙面の調査票を郵送したり、手作業で集計したりする必要がないことが理由です。1回当たりの調査費用を削減できれば、浮いたコストを追加調査に投入するなど、より多くのデータを収集したり、高い精度での分析を行ったりすることも可能です。
回答結果をグラフで可視化できる
定量調査で得られた結果は数値化できるので、グラフや表を用いた可視化が容易です。棒グラフを使って全体像を把握したり、円グラフを用いて割合を比較したり、折れ線グラフでデータの推移を視覚化したりするなど、調査結果をさまざまな形式で表現できます。これにより、調査結果のポイントや傾向が明確になり、メンバーとの共通認識の形成や戦略策定などもスムーズに行えるでしょう。
定量調査の注意点・デメリット

定量調査を実施する際は、以下の3つのような注意点・デメリットについても確認しておきましょう。
- データ分析の知識やスキルが必要となる
- 事前に立てた仮説との比較検証が重要になる
- 事前に設定した設問以外のことは聞けない
データ分析の知識やスキルが必要となる
定量調査の結果をマーケティング戦略や意思決定に結びつけるためには、データの集計と分析を適切に行う必要があります。目的と状況に応じて、集計と分析の切り口を変えなければ、データを上手に活用できません。
データ集計の代表的な手法は、「単純集計」と「クロス集計」の2つです。単純集計では、1つの項目ごとにデータをまとめ、ほかの要素は考慮しません。クロス集計では、ほかの設問や回答者の属性などを組み合わせます。そのため、全体の傾向をつかむなら単純集計、掘り下げた評価をしたいならクロス集計が適切です。
また、データ分析の手法には、以下のようなものがあります。
データ分析手法 | 特徴 |
---|---|
クラスター分析 | 集計結果を類似性で分類する。 |
時系列分析 | 時間ごとの変化を分析する。 |
主成分分析 | 高次元データを低次元データに要約する。 |
決定木分析 | ツリー構造で要因を抽出する。 |
テキストマイニング | 文字列を単語や文節ごとに区切って重要な要素を抽出する。 |
顧客の属性による傾向を把握したい場合は「クラスター分析」、時間の推移による態度変容を明らかにしたい場合は「時系列分析」など、適切な手法を選ぶことが求められます。自由記述式の設問を含める場合は、「テキストマイニング」を用いて重要な要素を抽出すれば、定量データとして活用しやすくなるでしょう。
事前に立てた仮説との比較検証が重要になる
仮説検証のために定量調査を行う場合は、調査結果が仮説と適合するか検証することが大切です。例えば、「自社商品の売上が低いのは認知度の低さが原因である」という仮説を立てたのであれば、認知度の実態を示すデータと照らし合わせて、仮説が正しかったかどうか検証します。仮説が正しい場合は対策を実行し、正しくない場合は前提となる仮説の見直しが必要です。
なお、調査結果の背景や経緯をより詳しく探る場合は、定性調査も行うのが効果的です。定量調査で得られた結果をもとに、「なぜそうなったのか」という仮説を立てて、対象者を選定してインタビューを行います。顧客の行動や心理を把握できるので、商品・サービスの改善につながるアイデアが得られることもあるでしょう。
事前に設定した設問以外のことは聞けない
定量調査では、事前に作成した調査票に参加者が回答するため、設問以外のことは聞けません。そのため、「質問したいこと」「想定される回答」を十分に検討した上で、設問と選択肢を設定することが重要です。ここが不十分な場合は、参加者が混乱して回答の精度が低下したり、有効回答数が少なくなったりします。
また、定量調査は主に選択式アンケートが使用されますが、「自由記述式」の設問を含めることも可能です。ただし、冗長な回答が増えると集計の手間がかかり、定量データとして利用しづらくなるので注意が必要です。「どのような回答を得たいのか」を定めた上で、回答者が簡潔に答えられるような質問文を設定しましょう。
なお、臨機応変な質問や掘り下げた質問をしたい場合は、前述したように定量調査を実施した後で定性調査を行うことをおすすめします。より包括的なデータ分析と詳細な洞察を得ることが可能になります。
定量調査の代表的な調査手法

定量調査の代表的な調査手法として、以下の4つが挙げられます。
- インターネットリサーチ
- 会場調査(CLT)
- ホームユーステスト(HUT)
- 郵送調査
1.インターネットリサーチ
「インターネットリサーチ(ネットリサーチ)」は、オンラインで実施する調査手法です。インターネットが普及した現在では、定量調査の主流となっています。調査票の送信から集計、分析までをインターネット上で行えるため、低コストかつスピーディーな実施が可能です。
2.会場調査(CLT)
「会場調査(CLT)」は、調査会場に対象者を集めて、商品やサービスを評価してもらう手法です。対象者からの評価はアンケートで行いますが、主催者と参加者が対面で接するため、インタビューによる定性調査も合わせて実施できます。会場費や人件費などのコストはかかりますが、商品に対する顧客の「リアルな反応」を調べたい場合は魅力的な手法です。
3.ホームユーステスト(HUT)
「ホームユーステスト(HUT)」は、一定期間の試用とアンケート回答を求める手法です。商品を参加者の自宅に送付したり、サービスに加入してもらったりして、実際に商品・サービスを使ってもらいます。健康食品やスキンケア用品、日用品のような、継続的に使用しなければ評価しづらい商品の評価に向いています。日常生活と同じ環境で試用できるため、実態を把握しやすいことが魅力です。
ホームユーステストのアンケート結果を精査することで、新たなアイデアや顧客ニーズの発見、商品・サービスの改善策の発見につながる可能性があります。また、アンケートの最後に自由記述式の質問を設定すると、定量データと合わせて定性データも収集できるでしょう。
4.郵送調査
「郵送調査」は、対象者の自宅に紙面の調査票を送付し、回答の記入と返送を依頼する手法です。対象者の住所が分かれば実施できるため、幅広い属性にアプローチ可能です。
ただし、回答者に負担がかかるため、近年ではインターネット調査が主流となっています。インターネット利用率が低い高齢世代を対象とする場合は、現在でも効果的な手法だといえるでしょう。
定量調査で顧客の消費行動に注目しよう

定量調査は、顧客の行動傾向を数値データで把握するために役立ちます。低コストで大量のデータをスムーズに収集できることは、定量調査の大きなメリットといえます。また、ポイントとなるのは、仮説を踏まえて質問事項や選択肢を設計し、結果を適切に収集・分析するスキルです。
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