コラム
アンケート調査は「目的」で決まる!重要性や実施方法、作成例も解説
2023.08.03
[コラム]

アンケート調査は、あらかじめ設定した質問について、調査対象となる消費者やユーザーなどに回答してもらう調査手法です。特定のテーマに関する人々の行動や心理を調べる「意識調査」の手法として、広く活用されています。
アンケート調査で消費者の本音を抽出できれば、自社の商品・サービスの改善に役立ちます。しかし、アンケート調査は適切な質問や選択肢を設計しなければ、回答率や信頼度が低下しかねません。そこで今回は、アンケート調査の実施方法やポイントについて詳しく解説します。
目次
アンケート調査の目的を理解しよう!

「アンケート調査」とは、あらかじめ設定した質問について、参加者に回答してもらう調査手法です。質問の形式には、複数の選択肢から選んでもらう「選択式」と、自由に答えてもらう「自由記述式」があります。
アンケート調査は、マーケティング分野では、自社の商品やサービスに対する利用者の評価や意識を把握するために活用されています。例えば、商品やサービスの認知度、購入理由、満足度などの調査です。アンケートで得られたデータは、商品やサービスの開発・改善や、顧客ロイヤリティ向上のための施策に役立ちます。
意識調査とアンケート調査の違いとは?
「意識調査」とは、特定のテーマについて人々の行動や心理を調べることを指します。マーケティング分野では、商品やサービスに対する消費者やユーザーの意識を調査し、その心理状態を把握して開発・改善に活かすために行われています。
意識調査は、前述したアンケート調査と似ているように思われるかもしれません。しかし、意識調査は「施策」であり、アンケート調査は「手法」である点が異なります。つまり、意識調査を実施するための手法の一つがアンケート調査であるということです。詳細は後述しますが、意識調査にはアンケート調査以外にも、インタビュー調査やSNSリサーチなどの手法があります。
意識調査を実施する目的とは?
意識調査の主な目的は、自社の商品やサービスの課題点や改善点を把握するために、消費者やユーザーの意識を調べることです。具体的な質問を通じて、購入動機や満足度を知り、その「本音」を引き出すことが重要です。そのため、以下のような項目が重要です。
- 商品やサービスの購入理由
- 企業やブランドのイメージ
- 商品やサービスの満足度
消費者やユーザーの本音を把握できれば、自社の商品やサービスを「顧客の実態ニーズ」に合わせやすくなります。顧客とのすれ違いが生じると、収益を上げにくくなり、マーケティングのコストも増えてしまいます。意識調査の結果を活用することで、顧客が求める商品やサービスを提供しやすくなるでしょう。
意識調査の主な実施手法

意識調査には、主に以下の3つの手法があります。
- アンケート調査
- インタビュー調査
- Webリサーチ・SNSリサーチ
それぞれの手法には特徴があり、目的に応じて使い分けることが重要です。詳細について見ていきましょう。
1.アンケート調査
「アンケート調査」は、複数の参加者に同じ質問を行い、データを収集する手法です。
アンケート調査の主な目的は「実態把握」と「仮説検証」です。実態把握では、商品やサービスの購入率や満足度などを調べます。仮説検証は、例えば、「売上が伸びない原因」の仮説を立てた上で調査し、その正しさを判断するためのものです。
アンケート調査を行うことで、あらかじめ市場の動向を把握してから商品やサービスを開発したり、販売後に発生した課題の解決方法を見つけたりすることができます。
一般的にアンケート調査というと、事前に質問をまとめた調査票を回答者に送付し、記入してもらうという「郵送調査」を思い浮かべるかもしれません。しかし、アンケート調査には以下のように複数の方法があります。
アンケート調査方法 | 特徴 |
---|---|
ネットリサーチ | 調査票の送信、回答などがインターネット上で完結する手法 |
電話調査 | 調査対象者に電話をかけ、質問に答えてもらう手法 |
会場調査(CLT) | 特定の場所で対象者に商品評価などをしてもらう手法 |
ホームユーステスト(HUT) | 自社商材を参加者の自宅に送付し、試用・評価してもらう手法 |
近年では、オンラインで手軽に行えるネットリサーチが、郵送調査の代替として普及しています。郵送調査と比べて参加者の負担が少なく、高い回答率が期待できるので、大量のデータを集めたいときに適しています。
2.インタビュー調査
「インタビュー調査」は、対象者に対してインタビューを行い、意見を集める手法です。以下に代表的なインタビューの種類を紹介します。
インタビューの種類 | 特徴 |
---|---|
街頭インタビュー | 街頭で歩行者などへ声をかけ、インタビュー調査を行う |
グループインタビュー | 対象者を5人など小規模なグループにまとめ、グループでインタビュー調査を行う |
デプスインタビュー | インタビュアーと対象者が1対1で、インタビュー調査を行う |
街頭インタビューは、多くの意見を不特定多数から集めたいときに向いています。グループインタビューは、参加者同士の意見交換や議論が生じるため、集団の消費者心理を把握することが可能です。また、デプスインタビューは個々の対象者に焦点を当てた詳細な質問ができるため、消費者の本音を引き出せます。
3.Webリサーチ・SNSリサーチ
「Webリサーチ」と「SNSリサーチ」は、消費者やユーザーの意識をインターネット上で調べるための手法です。
Webリサーチは、口コミサイトや個人ブログなどで発信された情報を調査し、消費者の本音を抽出します。アンケートに回答してもらうネットリサーチとは異なり、インターネット上の公開情報を分析する点が特徴です。
SNSリサーチも同様の考え方で、特にTwitter、Instagram、YouTubeなどのSNS投稿を分析し、消費者の行動やニーズを調べます。「SNS分析ツール」や「ソーシャルリスニングツール」を活用することで、効率的にSNS上の投稿を収集・分析できます。
これらの手法を活用することで、インターネット上に投稿される消費者の生の声を取り入れ、自社の商品やサービスの開発・改善に役立てることができます。
意識調査のためのアンケート例文

「アンケート」では、選択肢から回答を選ぶ「選択式」が一般的です。選択肢はデータ化しやすく、収集・分析が容易にできることがメリットです。
<選択式の設問例>
- 商品を購入されたのは何回目ですか?…選択肢は「初めて」「2回目」「4回以上」など
- 商品を購入して満足していますか?…選択肢は「大変満足」「満足」「やや不満」「不満」など
- ECサイトでの購入頻度はどのくらいですか?…選択肢は「初めて」「月1回程度」「週1回程度」など
さらに、「自由記述式」も加えると、消費者のより深層の本音を抽出しやすくなります。
<自由記述式の設問例>
- 商品を知ったきっかけは何ですか?
- この商品を利用している理由は何ですか?
- 利用頻度はどのくらいですか?
- 他の人にもおすすめしたいですか?
- 不満を感じる理由は何ですか?
自由記述式の設問では、具体的な意見や理由、感情など、選択式では表現できない消費者の本音を抽出できるのが魅力です。詳細は後述しますが、調査目的を明確にして簡潔な設問を用意することで、多くの消費者の声を収集できるでしょう。
本音を浮き彫りにする意識調査(アンケート調査)の4つのポイント

意識調査を実施する際は、消費者やユーザーの本音を明らかにするために、事前の計画が重要です。アンケート調査に焦点を当て、以下の4つのポイントを解説します。
- 調査の目的を明確化する
- 質問の項目を絞り込む
- 適切な回答形式を選ぶ
- 質問する順番を工夫する
これらのポイントを押さえることで、効果的な意識調査(アンケート調査)が可能となります。
1.調査の目的を明確化する
調査を行う際には、まず「調査目的」を明確にすることが重要です。目的がはっきりしていないと、どのような質問をすべきか分からなくなってしまいます。そのため、「どのような課題を抱えているのか」「調査結果をどう活かしたいのか」を考えて、具体的な調査目的を設定しましょう。
一般的な調査目的には、以下のようなものがあります。
- 顧客満足度やロイヤリティを向上させたい
- 企業やブランドのイメージを高めたい
- 新商品やサービスの売上を向上させたい
調査目的が明確になったら質問内容を検討します。例えば、「顧客満足度の向上」が目的の場合は、商品やサービスに対する不満を尋ねることで、改善すべきポイントが明らかになります。
ただし、調査目的によってはアンケート以外の街頭調査やSNSリサーチなどの手法が適しているケースもあります。意識調査の方向性を定めるためにも、調査目的の設定は不可欠です。
2.質問の項目を絞り込む
アンケートの回答率を向上させるためには、質問項目の「絞り込み」が欠かせません。消費者からさまざまな情報を得ようとすると、多くの質問項目を用意しがちです。しかし、質問が多すぎると回答者が面倒に感じ、途中で離脱する可能性が高まります。
そのため、アンケートの質問項目は厳選し、できるだけ少なくすることが大切です。回答者に文章を書いてもらう自由記述式の質問は負担が大きいため、最小限に抑えましょう。この点ついては後述しますが、アンケートの質問は基本的に回答者が10分以内に答えられるようにすることが理想的です。
3.適切な回答形式を選ぶ
質問作成時は、回答者の立場を考えて、できるだけ答えやすい質問にすることが大切です。アンケートでは、大きく分けて以下の3種類の回答形式があり、目的に応じて使い分けましょう。
回答形式 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
単一選択式 | 選択肢から1つを選ぶ | ・回答しやすい ・集計しやすい |
複数選択式 | 選択肢から複数を選ぶ | ・回答しやすい ・集計に時間がかかる |
自由記述式 | 自由な文章で回答する | ・詳しい情報を得られる ・集計に時間がかかる |
意識調査では、単一選択式のみや自由記述式のみという設計は好ましくありません。単一選択式のみでは回答者の意識を把握しにくく、自由記述式では回答者に負担がかかるからです。収集したい情報と回答者の負担のバランスを考えて、3種類の回答形式を組み合わせたアンケート設計をするといいでしょう。
4.質問する順番を工夫する
回答率を高めるためには、質問の順番を工夫することが重要です。例えば、アンケートの前半に自由記述式の質問があると、回答者が「面倒だ」と感じて離脱するかもしれません。そのため、アンケート前半では、以下のような答えやすい質問から始めるのがポイントです。
- あなたの年齢(年代)はいくつですか?
- お住まいの地域を選んでください
- よく利用する交通手段を選んでください
自由記述式の質問は最小限に絞り込んで、かつアンケートの最後に配置すると効果的です。また、関連する質問はまとめて、時系列で質問することを意識すると、回答者がスムーズに回答しやすくなるでしょう。
アンケート調査の回答率・信頼性を上げるためのコツ

意識調査を商品やサービスの開発・改善に活かすためには、信頼できるデータを多く集めることが重要です。しかし、「時間と手間がかかる」「質問が分かりにくい」などの問題があると、回答者はアンケートを避けてしまいます。
アンケート調査の回答率・信頼性を上げるためのコツを見ていきましょう。
アンケートの目的や回答にかかる所要時間を伝える
アンケートを実施する際は、最初の段階で、回答にかかる「所要時間」を明確に伝えると回答者に親切です。普通に回答していくと「2分で終わる」のと「10分で終わる」のとでは、受け止める印象も異なります。
あらかじめ所要時間を明示しておくことで、回答者が「今は時間がないから、帰宅して食後にゆっくり回答しよう」「短時間で終わるなら通勤電車の中で回答しよう」といった具合に予定を立てられます。これにより、いい加減な対応をされてしまうリスクを軽減し、良質な回答を得られやすくなるでしょう。
アンケート調査に時間をかけたくない人も多い!目安は回答時間10分以内
アンケート回答時間の目安は、10分以内に抑えることが理想的です。前述したように、質問数が多すぎると回答者に負担がかかるので、離脱率が高まります。
質問数が多い場合には報酬を増やす方法も考えられますが、報酬目当ての虚偽回答が増え、データの信頼性が低下する恐れもあります。信頼性の高い回答を得るためには、アンケートの質問数を絞り込み、想定時間で完了できるアンケート設計を意識しましょう。
アンケート調査の選択肢はなるべく少なくする
アンケート調査では、回答の選択肢を少なくすることも大切です。選択肢が多すぎると、回答者が選ぶのに時間がかかり、負担を感じてしまう可能性があります。そのため、質問の目的を明確にし、1つの質問には1つのテーマのみを取り上げ、簡潔にすることで、選択肢が多くならないようにしましょう。
「選択肢を絞り込めない」という場合には、質問が明確になっていない可能性があり、質問を分割するほうが適切かもしれません。また、「回答者の本音を知りたい」という場合には、自由記述式にするのも一つの方法です。
なお、消費者の意見や評価を「段階性」で答えてもらいたい場合は、選択肢を奇数個と偶数個のどちらにすべきか悩むことがあります。例えば、「この商品・サービスに満足していますか?」という質問に対しては、以下のような選択肢が想定されます。
奇数個の場合 | 偶数個の場合 |
---|---|
・非常に満足している ・満足している ・どちらでもない ・不満がある ・非常に不満がある | ・非常に満足している ・満足している ・不満がある ・非常に不満がある |
消費者やユーザーの傾向をはっきりさせたい場合は、偶数個の選択肢を用意することで「どちらでもない」という選択肢をなくせます。ただし、明確な選択を求めることは回答者に心理的な負担を与える可能性があるため、注意が必要です。
アンケート調査を実施するときの注意点

アンケート調査を実施するときは、以下の3つのポイントに注意しましょう。
- 回答者の手間を減らす回答形式にする
- 報酬の有無をしっかり記載する
- 回答者のデバイスを考慮する
回答者の手間を減らす回答形式にする
回答者に手間をかけるアンケートは、回答率や信頼性の低下につながります。質問はできるだけ選択式にした上で、選択肢の数も厳選しましょう。自由記述式の質問を設ける場合は「任意回答」にするなど、離脱率を最小限に抑える工夫が必要になります。
報酬の有無をしっかり記載する
アンケートの説明文で、報酬・謝礼の有無をしっかり記載することも大切です。適切な報酬が支払われるのであれば、回答者の動機付けが高まり、回答率の向上が期待できます。
ただし、報酬・謝礼を目的とした回答が増えると精度が下がりかねないので、まずは回答者にとって親切なアンケート設計を徹底しましょう。これにより、最小限の報酬でも最適な回答が得やすくなります。
回答者のデバイスを考慮する
オンラインでアンケートを行う「ネットリサーチ」を実施する場合は、回答者が使用するデバイスについても考慮した設計が必要です。
パソコンとスマートフォンでは、画面サイズや縦横比が異なります。そのため、小さな画面でも使いやすいレイアウトや操作性にも目を向けるといいでしょう。回答者が普段から使っているデバイスにフィットしていれば、回答率や回答品質に良い影響を与え、的確な情報収集が可能になります。
消費者が回答しやすいアンケート調査を心がけよう

消費者やユーザーを理解するための意識調査の手法として、アンケート調査は多くのデータを収集したいときに役立ちます。アンケート調査を実施するときは、調査目的を明確化した上で、質問や選択肢など適切なアンケート設計が重要です。
今回解説したアンケート実施方法やポイントを参考に、回答者の視点を考慮したアンケート設計を行い、回答率や信頼性の高い有益な情報収集を目指してください。
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