コラム
マーケティングにおける「属性」とは?定義から分類、活用方法まで解説
2023.08.11
[コラム]

「顧客属性」とは、顧客をグループ分類するための要素を指します。顧客属性を分類することで、自社がアピールすべき顧客層が明確になり、「顧客に響く」効果的なマーケティング施策を実施しやすくなります。
しかし、顧客属性や分析手法にはさまざまな種類があるため、適切な使い分けが重要です。そこで今回は、マーケティングにおける顧客属性の意味をはじめ、顧客属性の種類、分析手法などについて解説します。
目次
意外と理解していない!顧客属性とは?

「顧客属性」とは、顧客の基本的な情報や特徴を指し、主に以下のような情報があります。
- 年齢
- 性別
- 居住地域
- 職業
- 家族構成
- 所得階層
- 趣味嗜好
- 購買履歴
マーケティング分野では、これらの顧客属性をグループに分類し、それぞれの特性やライフスタイル、ニーズを分析します。これにより、ターゲット市場を明確にし、効果的な広告やプロモーション活動を展開することができます。
例えば、若年層をターゲットにした商品であれば、顧客属性の一つである年齢を基準に若者グループに分類し、若者がよく利用するメディアやSNS広告を活用する施策が考えられるでしょう。
また、顧客属性の分析は、消費者の行動パターンや需要変化を定期的に観測するためにも役立ちます。市場動向やトレンドを把握するために、顧客属性のデータ収集をし、分析することが重要です。
【マーケティング用語】顧客属性の定義とは?

ここからは、マーケティングにおける「顧客属性」について、以下の2つの観点で掘り下げていきましょう。
- 顧客属性を活用する意味
- 顧客属性とセグメントの関係
顧客属性を分析する目的とは
顧客属性の活用は、マーケティングの効率化に大きく貢献します。顧客を購買に導くためには、「顧客に響くアプローチ」が欠かせません。しかし、顧客が抱える課題やニーズは多様なので、画一的な手法ではうまくいきません。一方、一人一人に完璧にマッチした施策を行うことも困難です。
そこで役立つのが、顧客属性の分析です。消費者の課題やニーズは、それぞれの個性や置かれている状況の影響を受けると考えられます。先にも触れたように、顧客を属性に応じて大まかなグループごとに分類することで、マーケティングのターゲットの絞り込みや、戦略の策定などを的確に行うことが可能です。
例えば、「20代の女性」と「40代の男性」ではライフスタイルが異なるため、商品・サービスのニーズも異なります。そのため、どちらの顧客グループへアプローチするかによって、自社の商品・サービスの売上は大きく変わるでしょう。こうした違いを可視化できるのが、顧客属性の分析です。
知っておこう!顧客属性とセグメントの関係
顧客属性に基づいて分類された顧客グループは「セグメント(Segment)」と呼ばれ、分類する作業を「セグメンテーション(Segmentation)」といいます。市場に存在する不特定多数の顧客を、属性によってセグメンテーションすると、複数のセグメントができます。
これらのセグメントから、自社の商品・サービスに適するセグメントを選ぶのが「ターゲティング(Targeting)」で、最終的に選ばれたセグメントが自社の「ターゲット(Target)」となります。つまり、マーケティング戦略の立案に重要な、セグメンテーションとターゲティングの基本要素となるのが顧客属性です。
用語 | 用語の意味 |
---|---|
セグメント(Segment) | 顧客属性に基づいて分類された顧客グループのこと |
セグメンテーション(Segmentation) | 顧客属性を分類する作業のこと |
ターゲティング(Targeting) | 商品・サービスに適するセグメントを選ぶこと |
顧客属性の2つの種類

顧客属性にはさまざまな種類がありますが、「静的属性」と「動的属性」の2つに大別できます。それぞれの違いについて確認しておきましょう。
静的属性
「静的属性」は、何があっても変わることがない、不変の顧客属性を指します。静的属性は、以下のようなものが該当します。
- 誕生日
- 出身地
- 初回購入日
これらの属性は変わることがないので、一度データを収集した後は情報を更新する必要がありません。「氏名」は改名や婚姻によって変わることがあることから、静的属性ではないので注意が必要です。
動的属性
「動的属性」は、何らかの影響で流動的に変化する、可変の顧客属性を指します。動的属性は、以下のようなものが該当します。
- 氏名
- 現住所
- 職業
- 役職
- 家族構成
- 趣味嗜好
これらの属性は変わることがあるため、一度データを収集した後も定期的な情報更新が欠かせません。更新が不十分な場合は、古い情報をもとに不適切なセグメンテーションを行ってしまうので、注意が必要です。
セグメンテーションでは主に4種類の顧客属性を活用する

顧客の属性にはさまざまな種類があるため、自社の商品・サービスの性質に合う、適切な切り口でセグメンテーションを行うことが大切です。顧客のセグメンテーションを行うときは、主に以下の4種類の顧客属性を活用します。
- 地理的属性(ジオグラフィック)
- 人口統計的属性(デモグラフィック)
- 行動的属性(ビヘイビアル)
- 心理的属性(サイコグラフィック)
地理的属性(ジオグラフィック)
「地理的属性(ジオグラフィック)」は、顧客が居住する地域特有の気候や文化、経済など、地理的な要素を指します。特に、地理的属性の影響を受けやすいのは、食品、家電製品、衣料品などの業界です。
例えば、東日本と西日本では好まれる味付けが変わるため、地域ごとに加工食品の味付けや具材を変えることがあります。また、気候によって家電製品や衣料品の消費傾向が変わるため、地理的属性を考慮すると、在庫管理や販売戦略の最適化が可能です。
人口統計的属性(デモグラフィック)
「人口統計的属性(デモグラフィック)」は、顧客の年齢、性別、職業など、人口統計でも用いられる基本的な要素を指します。BtoBにおいては、企業の業種、規模などが該当します。人口統計データは、政府や自治体から信頼性の高いデータが得られるため、顧客分析で最も活用されることが多い顧客属性です。
行動的属性(ビヘイビアル)
「行動的属性(ビヘイビアル)」は、商品・サービスに対する顧客の行動に関する要素で、利用頻度、購入日時、購買環境などを指します。かつては顧客分析への活用は技術的・コスト的な限界がありましたが、ITの普及やECサイトの利用率が向上したことからデジタルデータの収集が可能となり、セグメンテーションに活用されることが増えています。
行動的属性による顧客分析を行うことで、「新規顧客」「リピーター顧客」「優良顧客」の観点でも顧客を分類でき、それぞれに適したアプローチや商品訴求が可能となります。
心理的属性(サイコグラフィック)
「心理的属性(サイコグラフィック)」は、価値観、ライフスタイル、趣味嗜好など、顧客の個性や心理的傾向などの要素を指します。BtoBにおいては、企業理念や経営ポリシーなどが該当します。
心理的傾向は定量的なデータとして扱うことが難しいため、顧客属性の分析に活用しにくい側面があります。しかし、人口統計的属性などほかの顧客属性と組み合わせることで、詳細なターゲティングや顧客理解が可能となり、より深い洞察を得られるのです。
顧客属性をマーケティングに活かすための4つの代表的な分析手法

顧客属性によってセグメンテーションを行った後は、そのセグメント情報をマーケティング戦略に活かすことが大切です。顧客分析の代表的な手法として、以下の4種類が活用されています。
- クラスター分析
- CBT分析
- デシル分析
- RFM分析
クラスター分析
「クラスター分析」は、不特定多数の集団から、類似性を持つものを集めてグループを作成する手法です。セグメンテーションとは異なり、年齢や性別、居住地域などの明確な基準では分類しないことが特徴です。
クラスター分析では、データ間の類似度を示す「距離」を測定し、近いもの同士を結合させて「デンドログラム(樹形図)」を生成します。クラスター分析は、複雑な顧客属性の要因を抽出したいときに役立ちます。
CBT分析
「CBT分析」は、顧客の購入履歴やアクセス履歴を活用して、顧客の次の行動を予測するための手法です。CBTは、「カテゴリ(Category)」「テイスト(Taste)」「ブランド(Brand)」の3つの指標から成り立ち、それぞれの要素から顧客をグループ化します。CBT分析により、自社にどのようなタイプの顧客が存在するか可視化でき、商品開発や販売戦略の立案に役立ちます。
デシル分析
「デシル分析」は、一定期間内の累計購入額に基づいて、顧客を10のグループに分類する手法です。デシルはラテン語で「10等分」を意味し、日常生活では「デシベル」「デシリットル」などの単位にも使われています。
デシル分析により、各顧客グループが自社の売上にどれくらい貢献しているか分かるため、「優良顧客」「準優良顧客」などのグループ分けが可能です。その上で、優良顧客グループには囲い込み施策、準優良顧客グループには優良顧客に引き上げるためのナーチャリング施策を展開するなど、適切なマーケティング戦略の設計に役立ちます。
RFM分析
「RFM分析」は、前述のデシル分析を発展させた顧客行動の分析手法で、購買行動に基づいて顧客をグループに分類します。RFMは、「最新購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「累計購買額(Monetary)」の3つの要素から成り立ち、自社の売上高に対する顧客の貢献度を分析します。デシル分析とは異なり、購買日や頻度も考慮されるため、より精度の高い顧客分析が可能です。
例えば、繰り返しリピート購入していて、かつ累計購買額が高い顧客は、自社にとって重要な「優良顧客」グループに属します。一方、過去に高頻度で購入していたものの最近は購買記録がない顧客は、自社の商品・サービスから離れた「離反顧客」グループとなります。これらの分析結果をマーケティング戦略に活かせば、顧客の状態に合わせたアプローチが可能です。
顧客属性の収集方法とは?

顧客分析を行うためには、顧客属性のデータを収集する必要があります。そのための手段として、以下のような方法があります。
- アンケート調査
- 会員登録
- ヒアリング
アンケート調査では、オンラインや郵送を通じて顧客属性を収集できます。SNS上や店頭でのアンケート調査も有効です。顧客の価値観やライフスタイルなども質問できるため、人口統計的属性をはじめ、行動的属性や心理的属性に関する情報収集にも役立ちます。
会員カードやポイントカードなどを導入している場合は、会員登録を通じて基本的な属性情報を収集できます。実店舗がある場合は、接客時に顧客に直接質問することで、リアルな属性情報を収集することもできるでしょう。
顧客属性をマーケティング施策へどう活かすのか?

顧客属性は、マーケティング施策のさまざまなフェーズで活用できます。
例えば、CBT分析を行うと、顧客がどのようなカテゴリ、テイスト、ブランドに関心があるのか分かります。そのデータに基づいて、顧客が興味を抱きそうな商品をECサイトの「おすすめ」として表示したり、関連するメールマガジンを送信したりすると、顧客のニーズを刺激することができるでしょう。
また、デシル分析やRFM分析では、顧客を「優良顧客」「準優良顧客」「離反顧客」などに分類可能です。この分類に基づいて、例えば、優良顧客に対しては「ポイント還元特典」や「限定イベント招待」などの優遇施策を行うと、競合他社への流出を防ぎやすくなります。さらに、準優良顧客には、メールマーケティングなどのナーチャリング施策で、優良顧客への引き上げを狙うことが可能です。
属性を理解して自社マーケティングに役立てよう!

今回ご紹介したように、顧客属性を理解することは、顧客への深い洞察を得るために不可欠です。
「地理的属性」「人口統計的属性」「行動的属性」「心理的属性」といった観点で顧客セグメントを行うことで、自社の商品・サービスのターゲットを明確化できます。また、「クラスター分析」「CBT分析」「デシル分析」「RFM分析」などの分析手法により、ターゲットに合わせた適切なマーケティング戦略の策定が可能です。
このような顧客属性の理解と分析手法の活用により、自社のマーケティング活動を、より戦略的・効果的なものに高めることが重要といえるでしょう。
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